一般財団法人住総研 |
2013年度 研究助成募集要項 |
「2013年度研究助成」の募集は締め切りました。たくさんのご応募ありがとうございました。 |
住関連分野における研究の発展に寄与するため、将来の住居・住生活の向上に役立つ、未発表の研究を助成します |
1.助成概要について |
1.1 助成対象 |
「住生活の向上に寄与する研究」・「住関連分野の研究」とし、他分野に及ぶ学術的な研究を含み、
未発表のものを助成します
研究テーマは、「住総研の重点テーマに係わるもの」と「自由テーマ」のいずれでも可とします
「重点テーマ」とは、その年度の住総研の活動の焦点となるもので、本年度は次のとおりです。
詳細については、以下 「4.重点テーマについて」を参照してください |
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<重点テーマ>
「作られたものから作るものへ」−主体形成としての住宅− |
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1.2 応募資格 |
当該研究のためのグループとし、個人・既存の団体・組織を除きます |
1.3 助成件数 |
15件程度(重点テーマ・自由テーマあわせて) |
1.4 助成内容 |
1.金額 |
1件当り100万円を上限とします |
2.費目 |
謝金・会議費・資料/印刷/複写費・交通費・出張旅費・機器/備品費/損料・雑費 |
3.期間 |
2013年6月1日〜2014年10月31日までの17か月間 |
4.提出物 |
中間時(2014年 2月28日):「研究中間報告書」及び「研究計画書」
完了時(2014年10月31日):「研究論文(版下原稿のPDF)」及び「研究費会計報告書」 |
5.その他 |
(1)科研費申請案件等がある場合には、その旨別途、研究助成申請書「13.他所からの助成の有無」欄に記載して下さい
(2)提出期限から3年を超えて論文が提出されない場合は、その後論文が提出されても受理いたしません。また、提出期限から3年を超えて論文が一度も提出されない場合は、助成金の返還を求めると共に、今後の研究助成の対象から除外する場合があります
(3)研究成果を発表する場合には、当財団から研究助成を受けたことを明示してください |
1.5 研究発表 |
提出された研究論文から毎年2〜3件程度採択し、2015年度に「住総研 研究選奨」として顕彰すると共に、発表の機会を設けております |
1.6 公刊 |
研究論文は、当財団発行の『住総研 研究論文集』に収録し、住総研研究委員会等の関係者及び、全国の主要研究機関へ寄贈する他、丸善出版株式会社より市販します |
1.7 知的財産権等の 取り扱い |
(※以下の内容を予め、ご了承ください)
(1)研究論文の著作権は、著者である研究者に帰属するものとしますが、研究者は、当財団が研究助成の成果を公開する為に、必要な範囲で、研究論文を複製・編集出版すること
(2)研究助成の成果として得られた工業所有権は発明者である研究者に帰属するものとしますが、研究者は、当財団に対して、無償の通常実施権について許諾すること
(3)申請者・研究者の個人情報については、本助成選考及び助成の目的のみに使用し、研究者の氏名・所属・研究題目は、当財団のHP等で公開すること
(4)研究論文等成果物に記載された個人情報については、研究者の責任の範囲とし、研究者は、別途「研究助成の個人情報取扱いに関する確約書」を当財団に提出すること
(5)その他、別途「研究助成 実施の手引き」に基づき、遵守する事項の確約書「研究助成の受給に関する確約書」を当財団に提出すること |
2.選考について |
2.1 基準 |
目的・課題の設定が明確で、研究として一定の水準に達することが期待され、かつ以下の一つ以上に該当すると判断されるものとします
(1)社会的要請が高い課題への取り組み
(2)先見性に富み、将来の発展性が期待できる課題への取組み
(3)将来の成長が期待できる若手研究者による取り組み |
2.2 方法 |
研究運営委員会で選考し、理事会・評議員会を経て、正式決定します |
2.3 決定時期 |
2013年2月末の応募締切後、4月中に内定通知、6月中に正式決定の通知書を申請者(主査)宛に郵送します |
2.4 研究運営委員会
(2012年7月現在/委員五十音順) |
委員長 |
松村 秀一(東京大学大学院 工学系研究科建築学専攻 教授) |
委 員 |
内田 青蔵(神奈川大学 工学部建築学科 教授) |
〃 |
木下 勇(千葉大学大学院 園芸学研究科 教授) |
〃 |
田辺 新一(早稲田大学 創造理工学部建築学科 教授) |
〃 |
檜谷 美恵子(京都府立大学大学院 生命環境科学研究科 教授) |
〃 |
森本 信明(近畿大学 理工学部建築学科 教授) |
3.応募について |
3.1 応募方法 |
所定の申請書に記入し、当財団宛に原則E-mailより提出してください(申請書以外の参考資料等は受付ません)E-mailの件名は、「研究助成申請(主査名明記)」としてください。郵送での提出も可能とします |
3.2 応募締切 |
2013年2月末日必着(郵送の場合は消印有効)
締切後、1週間以内に申請書受理の通知を事務局よりE-mailにて送付します
(なお、1週間を過ぎても受領通知がない場合は、以下、研究助成担当宛にお問い合わせください) |
3.3 申請書入手方法 |
(1)当財団ホームページ(http://www.jusoken.or.jp/)より、助成事業〜各種書式ダウンロードから入手してください
(2)または、研究助成申請書申込と明記の上、返信用封筒(角2封筒に宛名を明記し140円切手を添付)を研究助成担当宛(以下、お問合わせ先参照)に郵送してください |
4.重点テーマについて |
4.1 テーマ |
「作られたものから作るものへ」−主体形成としての住宅− |
4.2 要旨 |
高度消費社会の中で、各地の歴史や文化的な背景のもとで造られてきた住まいは、住宅供給の産業化とともに、現代的なテクノロジーを武器に住宅産業に参入したハウスメーカーやデベロッパー等で巨大化した市場経済の仕組みに呑みこまれようとしている。こうした状況のなかで、住まいはますます商品化の傾向を強め、住まいの「作るもの」*注1という住まい手の主体性や、伝統的住文化、生産の仕組みを支えていた職人の技術や地域文化もが失われるのではないかと危惧される。技術をはじめ様々な進歩は否定されるものでもなく、また過去に戻れということでもないが、このテーマの背景は、今を生きる我々が、未来を見つめる時に、もういちど住むという根源(それは“「場所」に存在を関係づける、生きる主体的行為”)に立ち返り、主体性を発揮する道を見つめ直すべきではないかとの疑問にある。
ここでは伝統技術や文化の継承だけではなく、人口減少や少子高齢化及びストックの利活用などの社会的課題への対応や、国際化、環境問題、エネルギー問題など、これからの時代において、かかる課題の解決も主体の問題として考慮する必要があるだろう。過去から未来へ持続可能性、住む・作る主体が形成される住宅(住宅地)のあり方を、研究・実践面での多様な角度から提起されることを期待して選定されたテーマである。
*注1「作られたものから作るものへ」は、西田幾多郎著の『絶対矛盾的自己同一』(1939年初版、岩波書店1989)よりの引用 |
5.重点テーマ/研究課題の例 |
『「作られたものから作るものへ」−主体形成としての住宅−』の研究課題の例 |
平成26年度の重点テーマとして定めた『「作られたものから作るものへ」−主体形成としての住宅−』に関連して、調査研究活動の一環として立ち上げた、『主体性のある住まいづくり実態調査委員会』にて議論を重ねてきました。以下の課題はその議論から出てきた点を纏めたものです。必ずしもこのテーマに限定したものではありませんし、このテーマに即していないと採用しないというものではありません。これらから喚起されて、研究テーマを発想したり、またこのテーマに関わらない新しい研究課題での応募もあってよいかと思いますので、意欲的な提案をお待ちします。 |
1.住むということ、住宅を作るということ等 「主体」の意味を問う根源的な研究 |
主体とは誰の主体なのか? 住み手か、造り手か、現在の住まいづくりで主体となっているのは誰なのか、といった、主語としての主体の議論。そして元々、日本の社会に主体はあったのか? 無いところに高度消費社会において、住宅は機械(コルビジェの「住むための機械」)から、まるで電化製品を買うかのごとく「商品」となり、いくつかのバリエーションの中から選択して購入する消費者としての受け身になってしまっているのか。そういう主体が見えない状況の中でも主体を求める動きが見られるのではないか。技術の進化とともに全てが与えられる(西田流に言うと「作られるもの」)に満たされた中で、人間自身の根源的な欲求から、主体を求める様々な動きがあるのではないか。ホームレスやネットカフェ住民という、あえてそういう社会的束縛を離脱したところにノマド的居住というような主体性を見るという議論もある。一方、ボルノウやバシュラールの議論のように火のイメージに還元する古典的見方もあろう。さらにそれがIからWeへとポリフォニックな多重性の中の個人という西田流に言うと「多と一」の絶対矛盾的自己同一としての住まいの方向性の模索も見られよう。「主体形成としての住宅」に関わる哲学的、現象学的アプローチによって、現代社会の変容をとらえながら、主体の在処、住まい、住宅生産の目指す価値を展望する研究。 |
2.住宅生産技術における主体性 |
住宅は「住むための機械」から「商品」に移行している。量としての生産性の向上は、質としての伝統的技能の衰退を生み出してきたのか、各地の地域固有の住宅が少なくなり、伝統的な住宅建設の技能もレッドデータ化の危機を提唱する事が求められる段階とも言える。しかし地域の工務店においては、伝統技能を守るという意識を持つような所は案外少なく、全て地方における高度経済成長を牽引してきた住宅生産の社会経済的な仕組みの中の営為にしか過ぎないという議論もある。わずか数%が何らかの主体性を発揮してきた、また今でも発揮しているという可能性を見る。地元工務店から、大手のハウジングメーカー、また住宅作家的な建築家や職人等、住宅生産に関わる技術的な面からの主体性に関する研究。 |
3.住宅の法制度や社会経済制度に関わる主体性 |
主体性と言っても現状の法制度の枠の中で規定されている。伝統的な民家を現在に生産しようとしても建築基準法の枠組から規制されて伝統的技術が継承されない等の課題がある。また建築に関わる様々な職人が住宅生産に関わるにも、金融公庫の制度から請負契約にしないとならない等の主体性と法制度が相克する場合がある。さらに日本においては住宅の歴史を見れば賃貸から持家に政策的に誘導されてきた経緯がある。そして現在の社会的格差が拡大する状況において住宅はどのような層の声から考えていくべきか。住宅史、社会史等歴史的な整理から、法制度や社会経済制度における住まいの現代の状況をとらえて住宅の主体を問い直す研究。 |
4.家族の変容と主体性 |
住宅は家、そしてイエとも標記され、イエは家庭、家族をも意味するように家族と表裏一体に解釈される社会文化的背景がある。しかし現代は古典的な家族像では測りえないほど多様化している。一人住まいの孤独死、幼児の虐待死等社会での問題は、古典的な家族像と現在の実態のズレの表れとも見てとれる。
自立−結婚−子どもを産み一家を持つといった古典的な人生目標は成り立つのか?家族は主体になるのか、それとも個人かという議論も踏まえて、家族は現代においてどう動いているのか、またどのような方向に行く(べき)なのか、といった家族の変容をとらえた上での住まいの主体性に関する研究。 |
5.住宅形態による主体性、賃貸やコレクティブ・ハウジングにおける主体性 |
戸建てか集合住宅か、賃貸か分譲かといった住宅の形態によって主体性も異なるのか。家を持ったとたんに束縛の暮らしになるといった議論がある。そういう意味で我が国の持家政策や土地本位制度を批判的に見て、賃貸の充実を説く議論もある。さらに賃貸式のコレクティブ・ハウジウングでは「持つことにこだわりがなくなり、さまざまな束縛から自由になるわけです。暮らしのことだけを考えることができる。そこに主体性が発揮できれば、持つ持たないの話からは一切離脱できているんです。」、「主体性と言っても、決して一色(ひといろ)でだれかの主体性とかではない」(委員会での議論から)との説明もある。コレクティブ・ハウジングやシェアハウスその他の新しい形態の住まいにおける主体性についての研究。 |
6.地域に住む主体性 |
団塊の世代が地域に帰り、地域内での関係、町会、自治会、NPO等の地域のガバナンスに活躍する例が増えてきている。これまで会社人間等と言われるような個人よりも従属する集団の価値、それはともすれば社会経済制度の枠の中で規定されていたかも知れないが、その場から異なる場に身を置いた時に異なる価値に気がつき、地域に根をおろして地域に住むという主体性の発揮となっているのか。地域という「場所」と主体性を考え、複雑化する地域の課題を視野に地域に住む主体性の展開に関する研究。
なお、「場所」と主体性の議論をつきつめていくと、自身の主体性が問われてくる。それは客体と主体という研究者自身への哲学的問いかけに身をさらして考えることになる。西田流に言うと「絶対矛盾的自己同一」、「作られたものから作るものへ」という「生きる」「生かされる」実践そのものか、研究スタイルも従来の枠を越えた新しいスタイルが展開されてもよい(東日本大震災を契機に科学者や専門家に社会から問われた、科学者や技術者の社会に向き合う姿のあり方を背景にも)。 |
7.持続可能な環境形成としての主体性 |
地球環境問題やエネルギー問題等から、資源、エネルギー等の自律循環的な住宅ないし住宅地づくりは究極の主体性の発揮される住まいづくりか?環境共生型住宅団地、エコビジレッジやエコシティの住宅地づくり、また少子高齢化という社会的課題に対して社会的な持続可能性に配慮した住宅地づくり等持続可能な住まい・住宅地づくりを牽引する主体性に関する研究。
「持続可能な発展」という1992年のリオの地球環境サミット以降の国際的な課題に対してThink Globally, Act Locally (地球規模で考えて、地域で実践を)というスローガンのもとに各地でのローカルアジェンダとして取り組みが求められている。前項の6と関連するが、我が国でも急務とされるエネルギー問題や地球温暖化対策に貢献する住宅形式は多様なステークホルダーと居住者の主体性に依存するのか、そうであるならどのような理念の共有や技術の支援によって可能か等、今後の展開に向けた具体的な研究。 |
8.災害復興の住宅地形成における主体性 |
東日本大震災等の大災害後の復興は時間を急ぐこともあり、トップダウン的に復興公営住宅や土地区画整理事業による住宅地が形成される。この時間を競う復興住宅地づくりにおける居住者の主体性の発揮はどのようにあるのか、また課題があるとしたらどのように進めたらよいのか、現在進行中の東日本大震災の被災地における復興の経緯や過去の事例等から復興住宅における主体形成に関する研究。 |