第58回
(話題) 新宿ヤミ市の復原
(要旨)
統制経済に対する非合法取引ーつまり闇取引は戦時中からあったが、戦後「闇」は「ヤミ」へかわり、焼け跡に開かれた上野・池袋・新宿・渋谷・有楽町などの青空マーケットは、飢餓の世界に懸命に生きる庶民にとって日常世界をはみ出した夢の場であり「ハレの空間」であったとし、新宿を例にとって「光は新宿より」と叫んで物資流通とヤミ市形成の担い手になったのはテキ屋集団であり、それは自治体・警察も一体となった生きた経済の生成であった、と論じられました。また江戸東京博物館への展示用模型作成のために昭和21年頃の新宿ヤミ市の検証を進めているが、終戦直後で資料は少なく、個人経験は特殊鮮烈でも普遍的なものになりにくいと前置きしながら、地図・写真・聞き取り調査例などを示し当時の実情を解説されました。
ヤミ市の昼の顔と夜の顔、雰囲気の今に残る場所、ヤミ市の音など経験談も交えて活発に交わされました。