第50回
(話題) 江戸住宅事情
(要旨)
片倉の調査執筆による都史紀要34「江戸住宅事情」をベースに、寛政改革・天保期の地代店賃問題を中心に話題が展開された。すなわち、寛政の改革は物価引き下げ策が重要な柱であった。しかし、相対の契約が基本である地代店賃は、市場原理が作用して所により上下はあるものの、元文改鋳後の貨幣価値の低落を考慮すると享保期と大きな変動はない。地主の利は薄く、逆に店借層の生活維持を保証する役割が再認識されて、“町入用”の削減を令されはしたが、地代店賃の引き下げは盛り込まれなかった。これに対し天保期の地代店賃引き下げ令は、寛政の基準に“町入用”を引き下げ、かつ建物の構造の違いなどによって細分し、言わば店賃の公定基準化をしようとしたものだが、実際には運用されず明治維新に至ったと論じた。
地代と沽券の関係、当時の公示地価と実勢地価、利に合わなくとも伝来の土地の維持所有に努める地主の実態など、多岐にわたった。