第180回/第6回「東京の地域学を掘り起こす」シリーズフォーラム
(話題) 川越のまちづくりと歴史的建造物の活用
(要旨)
東京の郊外、川越は小江戸川越と呼ばれていて、江戸東京と深いつながりがある。フォーラムは、通常は東京都内で開催しているが、東京を離れて「出張フォーラム」として川越で開催した。
フォーラムの前に、蔵造りが並ぶ重要伝統的建造物群保存地区を見学して、川越の伝統的建造物とまちづくりを概観した。
フォーラムでは、荒牧氏が川越の歴史と歴史的建造物の保存・活用制度が整備されていった経緯を発表した。更に、その制度整備の過程で市民が行政の動かし方を知ったことにも触れ、川越の20年に及ぶまちづくり活動の全体像を示した。藤井氏は川越の歳時記を紹介したのち、旧織物市場の保存運動が市民の発意によって始まり、それが川越市の有形文化財になったことについて報告をした。内田氏は歴史的建造物活用について、研究成果と川越まちづくり審議委員の立場から、具体的にその活用方法を提案した。例えば、旧鏡山酒造を「まちのえき」として活用すること、旧織物市場を芸術家村に、旧鶴川座は芝居小屋として復元し、芝居一座へ貸出しをすること、旧山崎別邸は川越のゲストハウスとしての活用等である。森委員は、川越と谷根千地域のあり方についてコメントをした。
質疑・討論は、陣内委員長の司会のもと、保存や活用についての制度が整った川越の更なる課題として、次の意見があった。(1)歴史的建造物の活用における採算性、(2)観光時間3時間の現状から「成熟した」観光への展開、(3)地域力の継承等を議論した。
川越は、まちの歴史的文化を発見し、その歴史的価値を復権させ、個々の歴史的建造物においては廻遊性を持たせている。それは実験的ではあったが、大きな可能性を示し、いまその第一段階の成果は結実している。フォーラムで、そのことを周知できたことは、大きな意味がある。
会場の「茶陶苑」は、嘉永3年に建造された大蔵を修復保存したものである。大盛況の会場に歴史的文化的雰囲気を高めてくれた。また、フォーラムは東洋大学工学部現代GPと共催し、川越市、川越市教育委員会、NPO川越蔵の会の後援を得た。そのことによって、様々な媒体から開催案内を配信していただき、フォーラムの様子は川越の新聞やTVメディアにも取り上げられた。