第169回
(話題) 下北沢の魅力−日本型都市再生のあり方を探る−
(要旨)
小田急線と京王井の頭線が交差する下北沢は、様々な文化的活動が絶えず自発的に催され、街並みは迷路のようで、無数の個性豊かな店々を育んでいる。大資本の開発によるものではなく、そこに集う人々の営みが結びついて街ができた稀有な成功例といえる。
小田急下北沢駅は二〇一三年に地下化される予定である。それに伴い、世田谷区は、1946年に決定された幅26mの補助54号線の建設計画を持ち出した。駅前ロータリー広場の整備とともに計画を進めようとしている。この計画が実施されると、下北沢のほぼ中央が道路によって分断され、街の変質が危惧される。それで、現在、様々な反対の声が上がっている。
今回のフォーラムは、まず、下北沢の街を、明治大学小林研究室と「Save the 下北沢」のメンバーの案内で歩いた。そのあと、北沢タウンホールにおいて、陣内秀信委員(法政大学教授)の司会でフォーラムを開催した。
吉見俊哉委員(東京大学教授)からは、下北沢に街の文化が熟成した要因、「場の力」、まちづくりの主体は誰なのか等、都市論からの発表があった。「Save the 下北沢」のメンバーは、再開発受入の商店街、地元商店とテナント、ニューカマーとオールドカマーの連帯の可能性、運動における専門家の役割等について報告があった。小林正美氏(明治大学教授)からは、下北沢の歴史、特徴、そして再開発計画が浮上した経緯、開発後について発表があった。地元のジャズ・バー Lady Jane オーナーの大木雄高氏からは、40年間を振り返って、下北沢の街の魅力が語られた。
発表を踏まえて、参加者とともに、「道路ありきの都市開発」ではなく、街の魅力を豊かにしていこうという議論は、初冬の下北沢を熱くした。