第154回
(話題) 向島の成立と下町気質
(話題要旨)
向島といっている地域は、東京都墨田区にあって、隅田川・北十間川・旧中川・荒川に挟まれている。フォーラムに先立ち、まず地域の現状を見た。コースは向島百花園を見学した後、会古路地、法泉寺、白鬚神社、フルハウス、子育て地蔵、鳩のまち商店街、一寺言問集会所、蓮花寺、と回ってフォーラム会場の向島百花園へ戻った。
江戸時代には、ここで朝に採った野菜が、船で運ばれて将軍の朝食になったところである。文化人との交流も身近にあった。関東大震災以降、町に震災避難者がやってきたり、水運と水を必要をする工場が進出してきて、町は自然発生的に膨れた。隣近所と無関係であることが都会生活のバロメータのように言われるが、向島は塀がつくれない町である。だから、相互に監視や注意が働き、互いに信頼をしあって安全な町をつくっている。そして、社会的な構造が積層・重複している。具体的に言えば、仕事、子ども、町会、祭り、飲み仲間等というチャンネルのようなものがある。これらを利用しあうというのが下町気質ではないだろうか。
こういう町がおもしろいと、若い人が移り住んできたり、専門家等がはいってきて向島学会がつくられた。向島学会は新しい意味合いを発見し、情報を蓄積して公開し、発信してくれる。それらを住民ととも共有し、いままで見えなかった地域のよさや価値を再確認する場になった。マスコミで地域が紹介されると、住民は地域に対するプライドを持つ。そして、更にそれは子どもたちの原風景の形成につながるのである。