第144回
(話題) 江戸東京フォーラムの果たした役割
(要旨)
江戸東京学を振り返るフォーラムである。いつものスタイルと様相を異にして、土曜日の昼下がりに庭園美術館でサロン風に開催した。
小木新造委員長と陣内秀信委員が江戸東京学について考察をし、それに対して太田博太郎氏からコメントがあった。
江戸東京フォーラムと東京都江戸東京博物館展示構想プロジェクトは、ほぼ同じ時期にスタートし、交流をしながら活動をしてきた。
江戸東京博物館は、来館者が見て考え、感動を覚えるような博物館にするために、学際的研究である江戸東京学の目指すものを展示した。都市の文化や空間の展示である。それらを近世と近代の流れのなかでとらえた。来館者に何をどう見せるかは、真をきちんとおさえることが重要である。基本を踏まえて生活の個別をみる、生活レベルで歴史を調べ直す。それらの視点を踏まえてつくった模型展示は、来館者の勉強になることはもちろん、模型に携わった人たちも自分たちの研究を発展させることにつながる。また、企画展ではスタッフがチームを構成して、その成果を集めて次のステップにつなげてようにしている。
江戸東京博物館は当初から研究をしたいと考えていた。現在、その成果が表れつつあって、研究者が育ちつつある。
江戸東京学は1980年代にできたが、学際的研究は難しい。江戸東京学を学際的に展開するには、研究方法論を確立し、学際的なものを受け入れられるようにな余地を持つことが重要である。例えば、人の研究に関心を持つ、基本的なものに遡る議論をする、広い視野に立つ、先を読む社会的な感覚を磨く、などである。
大先輩から若手研究者を元気づける、また研究的示唆に富む、有意義なフォーラムでもあった。