第139回
(話題) 「ニュースの誕生」展と江戸東京学−かわら版・新聞錦絵の情報世界から見えてきたこと−
(要旨)
フォーラムは、東京大学総合研究博物館で開かれた「ニュースの誕生−かわら版・新聞錦絵の情報世界展」(1999年10月8日〜12月12日)についての報告であった。
この展覧会は、東京大学新聞研究所の創立者である小野秀雄氏のコレクションを中心に820点のかわら版・新聞錦絵を展示して、幕末維新期の社会の中での「ニュース=新聞」のありようを考え直してみようとした。
小野コレクションのかわら版には、大政大地震などの多数の災害かわら版など貴重なものが多数あり、一部は『かわら版物語』によって、多くの研究者に知られている。また、新聞錦絵も、明治初期の新聞と民衆の日常意識のかかわりを浮かび上がらせる多種の貴重なものが含まれている。
展覧会では、これらが一挙に展示されるとともに、全コレクションについての詳細な画像データベースが提供され、さらに、かわら版や新聞錦絵の口承性を浮かび上がらせるべく義太夫による音読も試みられたことが紹介された。
また、企画者たちの数年に及ぶ準備と展覧会開催の過程で、情報の歴史やメディアの展示をめぐってどのような点が明らかになってきたのかが示された。さらに、このプロジェクトのなかで、作成された小野コレクションのCD-ROMも紹介された。