第132回
(話題) 江戸歌舞伎の特色
(要旨)
歌舞伎は江戸時代を通じて、都市大衆の娯楽を代表する大がかりな興行として行われている。三都の大芝居はいずれも地域文化に見合った体質を形成し、時代相を反映しつつ発達し展開する。「江戸」の歌舞伎は、京・大坂のそれとは性格の異なる演劇として発達する。このことを次のように具体的に明示された。
まず、江戸の地に町が形成される過程において、歌舞伎はどの場所で興行され、どのような経過をたどって「江戸三座の制」と呼ばれる三座体制に落ち着いたのかが示された。
さらに、江戸の劇場は京・大坂の劇場とちがい、中村勘三郎座(略して中村座)、市村羽左衛門座(略して市村座)、森田勘弥座(略して森田座)と称された。このことは、江戸独自の興行の在り方、すなわち座元を中心とする保守的な興行形態が存在すると言及された。
また「仮櫓」という独特のシステムの存在と意義、江戸の「芝居町」の成り立ち、天保の改革に際し猿若町へ強制移転させられる前後の情勢についても触れられた。
最後に、祝祭性・饗宴性が本質になっていることを、歌舞伎十八番や所作事の例によって指摘され、大衆の美意識を通底する歌舞伎と浮世絵との密接な関係も述べて結びとされた。