第118回
(話題)  江戸藩邸物語
(要旨)
近年江戸藩邸に関する研究が盛んに行われている。その背景として次の2つが考えられる。1つは江戸遺跡を発掘調査するとき、その対象の多くが武家屋敷であるということ、もう1つは藩をとらえる視点が地域史から国家史へと移行したことである。
徳川御三家の1つである水戸藩を事例として取り上げてみる。同藩では小石川邸をはじめとする各邸があるが、その変遷や機能、そこで繰り広げられたさまざまな行事や事件をみていくと、江戸藩邸の多様な側面がみえる。また、「副将軍格」ともいわれ、定府であったことが、時により諸藩邸と異なる興味深い側面もみせる。
藩邸が都市江戸に対して開かれていたのか、閉じられていたのかといったことをはじめとして、今後さらに検討すべき課題は多い。まだ個別事例の蓄積という段階であるが、やがて江戸の都市像を内容豊かなものするであろう。