第103回
(話題) 同潤会による復興まちづくりと普通住宅建設について
(要旨)
同潤会の業績は、いわゆる「同潤会アパート」が有名であるが、それに先行した関東大震災被災者のための応急の仮住宅がある。更に、後の本格的住宅建設の始まりとなった普通住宅がある。普通住宅は大正13年(1924)度に3420戸建設しており、これがわが国で初めての近代的住宅団地の形成になるのである。
そこには、1.同潤会事業の出発点で、わが国の計画的集合住宅地づくりの起点となり、2.集合住宅団地のパイオニアとして目標とすべき社会像・生活像を描き、明確な意図をもってそれに対応する空間のデザインを試み、3.住宅地のアーバンデザインを試行・実践し、4.社会福祉施策と連結してさまざまな公共公益施設の設置、5.地域に住居をもつ管理者(同潤会職員)による補修・家賃徴収・入居者管理の他、住宅地の運営全般に及ぶ管理システムなど、先進的な試みが数多く見られる。しかし、立地条件の故か、高い評価は得られぬまま事業の重点はやがて不良住宅地改良やRCアパート建設に転換していった。
実例として、松江・西荻・井土ヶ谷・十條・荏原・尾久・赤羽・砂町住宅などから、区画整理標準の萌芽が見られる。更に、創出された空間の特徴から、同潤会の意図した郊外田園都市像が探れる。